ストレスが消化器系に与える影響(ストレスと腸の関係)

ストレスが消化器系に与える影響(ストレスと腸の関係)

ストレスは、全身、特に腸に多くの生理的な影響を与えます。

私たちの自動的なストレス反応は「闘争」もしくは「逃走」の選択とされています。これはヒトが進化する中で、なくてはならない反応でした。

今回は、前回の「腸脳軸」に続いて、「ストレスと腸の関係」についてご紹介します。

ストレスが消化器系に与える影響

  1. 腸脳軸
  2. ストレスと腸の関係

闘争・逃走反応

その昔、石器時代の祖先は、闘争・逃走反応によって猛獣の餌食とならずに生き延びました。

今はもう、猛獣から逃げる心配はありませんが、この生理的反応は残っており、現代でいうと、試験やプレゼンテーションなど、人によっては脅威と感じる状況に直面すると発動されます。

ストレスを感じると、交感神経系が活性化し、急性ストレス反応が起こります。その結果、体はコルチゾールの産生を高め、腸を含む体全体にさまざまな変化を引き起こします。

まずはストレス信号が腸脳軸に沿って伝わります。脳が腸にエネルギーの使用を腸の消化活動ではなく、猛獣から逃げるために必要な活動に向けるよう指示します。猛獣から逃げる場合、腸の消化活動の優先度は低くなります。

その結果、血液は腸から手足へと流され、消化が遅くなり、突然の下痢を引き起こすことがあります。

また、コルチゾールの分泌が増えると、胃酸を抑える化合物であるプロスタグランジンの数が減少し、加えて、ストレスによって起こる筋肉の痙攣が腸の問題を引き起こします。

さらには、ストレスは内臓の過敏性を高めるので、痛みに対する反応が増加します。

慢性的なストレス

慢性的なストレスは腸の透過性を高めてしまい、普段なら腸壁を通過しない細菌が血液にとり込まれ、低レベルの慢性炎症が引き起こされることがあります。

ストレス反応は、短期的(急性)には極めて自然で無害ですが、長期的(慢性)なストレス状態が続くと、肥満、心臓病、糖尿病、うつ病など、さまざまな疾患のリスクが高まると言われています。

さらに、慢性的なストレスは、IBSや炎症性腸疾患など、複数の消化器系疾患の発症や症状の悪化に関与することが以前から知られています。

Atlasgut.


長時間のストレスや幼少期のトラウマは、視床下部-下垂体-副腎軸(HPA)の調節障害を引き起こし、コルチゾールの前駆体であるコルチコトロピン放出ホルモン(CRH)の産生を増加させるとされています。

副腎軸(HPA)は、身体のストレス反応を制御していて、闘争や逃走反応の程度を決定します。

この決定機能がうまくいかなくなると、急性ストレスから抜け出せなくなり、慢性的なストレスとなり、さまざまな疾患リスクが起こります。この副腎軸(HPA)の機能不全は、多くの精神疾患において見られます。

ストレスと腸は関係している?

観察研究では、心理的ストレスがヒトの腸内フローラの変化と関連していることが示されているものの、因果関係はまだ確立されていません。それにも関わらず、ストレスが直接的にも間接的にも腸内フローラの多様性を乱すと想定されています。

そのひとつの仮説は、腸管運動の変化や粘液分泌の減少は、腸内環境を変化させ、有益な微生物や常在菌を犠牲にして、強固な病理学的細菌が繁殖することを可能することです。

ストレスを受けると食べたいと思うものが変化することがよくあります。これは、ストレスからくる腸内環境の乱れが原因とされています。

ストレスによって、砂糖、脂肪、塩分を多く含む超加工食品が食べたくなる経験はないでしょうか。このような食品を多く含む食事は、腸内フローラの異常(ディスバイオーシス)を引き起こすことにつながります。

もうひとつの仮説は、ノルアドレナリンとノルエピネフリン(NE)ホルモンが、腸内フローラの変化を促進するというものです。この仮説は、NEが特定の細菌の遺伝子発現を変化させることが観察されている動物実験によって裏付けられています。

無菌マウス(無菌環境で飼育された細菌を持たないネズミ)は、不安様行動が増加し、ストレスに対する副腎軸(HPA)の反応が誇張されることが観察されています。

2004年に行われた研究で、無菌マウスに特定のビフィズス菌を移植することで、HPA反応の誇張を逆転させることに成功しています。

最後に、うつ病患者の糞便を移植した無菌マウスは、うつ病の症状や不安様行動が増加したことから、腸内フローラが気分に影響を与えることが示唆されています。

まとめ

  • 腸脳軸は、脳の認知・感情中枢と腸の機能をつなぐ双方向のコミュニケーションネットワークです。
  • 闘争・逃走反応は、危険を察知したとき、あるいは実際に危険を感じたときに自動的に起こる生理的な反応です。
  • ストレスがかかると、体はコルチゾールの産生を高め、腸を含む全身にさまざまな変化を引き起こします。
  • 急性ストレス反応は、消化を遅らせ、下痢を引き起こす可能性があります。さらに、ストレスは腸の痛みを伴う筋肉の収縮を誘発し、痛みに対する感受性を高める可能性があります。
  • ストレスは、過敏性腸症候群や複数の炎症性腸疾患など、数多くの胃腸の問題を引き起こし、増大させる可能性があります。
  • 慢性的なストレスは、腸内フローラの多様性の低下や腸管透過性の亢進と関連しています。
  • 腸内細菌叢がストレス反応性に影響を与えることを示唆する新たなエビデンスも出てきています。
  • ストレスマネジメントの手法を導入することで、ストレスに起因する消化器系の問題に対処することができます。

☝免責事項☝この記事は情報提供のみを目的としたものです。専門的な医学的アドバイス、診断、治療の代わりとなるものではありません。


アトラスチーム アトラスチームの遺伝子検査開発者

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